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八ヶ岳の相続空き家、名義が親のままだと売れない?——相続登記と残置物、まず何から片づけるか配信日:
空き家が「動かせない家」になる前に——相続未登記と残置物という二つの入口の詰まり
相続した実家を空き家のまま持っている方の多くが、ある時点で同じ壁にぶつかります。「いざ手放そう」と決めても、すぐには動けない。理由は建物の傷みでも、税金でもありません。名義が亡くなった親のままになっていることと、家の中に物が残っていること。この二つです。
放置のリスクというと、屋根が落ちる、固定資産税が上がる、区との関係が切れる、といった「時間が経つほど悪くなる」話が中心になりがちです。それも事実です。ただ実務で県外の相続人の方と話していて本当に動きを止めているのは、もっと手前にある二つの入口の詰まりであることが多い。今回はそこを整理します。
相続した空き家は、名義が親のままだと売れないのですか?
売却の契約自体ができません。登記簿上の所有者が亡くなった方のままだと、相続人への名義変更(相続登記)を済ませてからでないと、第三者への売買に進めないためです。
ここでつまずく方は少なくありません。親が亡くなって何年も経ち、いざ売ろうと不動産会社に相談して初めて「まず相続登記が必要です」と言われる。相続人が兄弟3人いれば、3人全員の合意と書類が要ります。1人が遠方、1人が体調を崩している、関係がやや疎遠——そういう状態だと、書類を揃えるだけで数か月かかることもあります。
2024年4月から相続登記は義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、過料の対象になり得ます。これは「早く売れ」という話ではなく、持ち続けるにしても、手放すにしても、名義の整理は避けて通れなくなったということです。
八ヶ岳西麓の物件には、ここにもう一段の事情が重なります。実家の宅地だけでなく、畑や山林が一緒に相続されているケースが非常に多い。地番が10筆、20筆と分かれていて、しかもそのうちのいくつかは祖父の代から名義が変わっていない——いわゆる数次相続の状態です。私(朝倉)が現地で公図と登記を突き合わせると、相続人ご本人も把握していなかった筆が出てくることがしばしばあります。宅地は登記が新しくても、山の中の一筆だけ三代前のまま、ということが実際に起こります。
ここは脅すための話ではありません。全体像さえ一度つかめば、順番に片づけられるというのが実務上の結論です。詰まるのは「何筆あって、どれが誰の名義か」が見えていないからで、見えれば動けます。
家の中に残された荷物(残置物)はどうすればいいですか?
残置物があるままでも、売却や買取は可能です。すべてを片づけてから動かなければならない、というのは多くの場合、思い込みです。
県外にお住まいの相続人にとって、実家の荷物の処分は重い負担です。仏壇、写真、衣類、農機具、物置の中身。「全部片づけてからでないと売りに出せない」と思い込んで、その準備が整わないまま何年も時間が過ぎていく——これがよくある足止めのパターンです。
実際には、選択肢はいくつかあります。買主が再生(リノベーション)を前提に購入する場合、残置物の一部はそのまま引き継がれることもあります。自社買取であれば、残置物の処分を含めて引き受けられる場合もあります。もちろん、ご自身で形見やご位牌などの大切なものだけを取り出し、残りを処分業者に任せるという通常の段取りもあります。
大事なのは、「どこまで自分でやり、どこから任せられるか」を最初に切り分けることです。八ヶ岳西麓の農地付き空き家だと、母屋の荷物だけでなく、納屋の農機具や物置の資材が残っていることが多い。これも、農地や山林の扱いと合わせて一度棚卸ししておけば、処分のボリュームが見えて段取りが組めます。
冬を越すほど、整理の手間は増える
相続未登記も残置物も、急いで決断する必要はありません。ただ、八ヶ岳西麓では一冬越すごとに現場の手間が静かに増えていくという現実があります。
無人の家は冬の凍結で水道管や給湯器が傷みます。標高1,000mを超える集落では、水抜きをしていない空き家が一冬で配管を破裂させることが珍しくありません。そうなると、残置物の処分に水回りの修繕や清掃が乗ってきます。庭木や畑は一年で大きく伸び、隣家や区の管理する道へ越境すれば、その対応も加わります。
「いつか片づけよう」と置いておくことが、結果として整理の総量を増やしていく。これは怠慢の問題ではなく、人が住まなくなった建物と土地が自然に向かう方向です。だからこそ、動くか動かないかの前に、現状を一度止めて把握しておくことに意味があります。
まず何から手をつければいいですか?
売る・解体する・残すを決める前に、「名義・筆数・残置物・区の状況」を一枚に棚卸しすることから始めてください。決断はその後で構いません。
順番にすると、こうなります。
ひとつ、登記を確認する。宅地・畑・山林がそれぞれ何筆あり、名義が誰のままか。数次相続になっていないか。ふたつ、残置物の量と種類をおおまかに把握する。自分で取り出すもの、任せるものを仮に分ける。みっつ、区との関係を確認する。区費の支払い、草刈り・除雪の当番がどうなっているか。よっつ、これらを一枚にまとめて、初めて「どの道を選ぶか」を考える。
この棚卸しは、それ自体が相続の整理になります。ご自分の代で一度きちんと全体を見ておけば、仮にすぐ手放さなくても、次の世代に「分からない家と山」を引き継がせずに済みます。
朝倉所見——「分からない」を「分かる」に変えるだけで、家は動き出す
年間300件を超える査定相談を受けていて感じるのは、相続空き家で本当に人を止めているのは、税金でも建物の傷みでもなく、「全体が見えていない」という一点だということです。何筆あるのか、名義はどうなっているのか、荷物はどれだけあるのか。これが霧の中にあるうちは、誰も決断できません。
逆に言えば、現地で公図と登記を突き合わせ、家と納屋と畑を一通り見て、一枚の図に落とす。それだけで、止まっていた相続が動き始めます。八ヶ岳西麓は宅地・畑・山林の三層が一体で相続される土地柄なので、この棚卸しは都市部の空き家より一手間多い。けれども、その一手間を一度かければ、あとは順番の問題になります。
私たちが大切にしているのは、「ご自分の代で整理できた」という状態をつくることです。金額の大小よりも、世代をまたぐ負担を一度ここで断ち切れたかどうか。そこに価値の中心を置いています。
こんな方に向いています
- 県外にお住まいで、八ヶ岳西麓の実家・農地・山林を相続し、何から手をつければいいか分からない方
- 名義が親や祖父の代のままで、相続登記が済んでいない物件を持て余している方
- 残置物の処分が負担で、売却に踏み出せないまま時間が過ぎている方
- すぐに売るかどうかは決めていないが、まず現状を整理しておきたい方
急いで売却を決める必要はありません。まずは現状を一度止めて見える化すること。そこからご一緒に考えます。
茅野市・原村・富士見町(八ヶ岳西麓3町村)の空き家・農地付き空き家のご相談を承っています。残置物・境界未確定・農地付き・相続未登記の物件にも対応します。
yatsugatake-akiyasoudan.com
※相続登記の義務化(2024年4月施行)・過料規定は2026年6月時点の制度に基づく一般的な説明です。個別の手続き・期限・要否は、お住まいの状況により異なります。具体的な相続登記は司法書士、税務は税理士と連携してご案内します。
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八ヶ岳ライフ株式会社 代表 /
不動産鑑定士
長野県茅野市出身。2012年に地元密着の不動産会社「八ヶ岳ライフ」を設立。不動産の適正価値を見極める国家資格「不動産鑑定士」を保有し、年間300件以上の相談実績を持つ。特に八ヶ岳エリア(茅野市・原村)において、他社では取り扱いが難しい空き家や放置物件の再生・買取に力を注いでいるのは、「不動産を通じて故郷に貢献したい」という想いがあるからです。Youtubeでも、相続した空き家・土地・畑などの処分や活用に関する役立つ情報を発信しています。地元出身者ならではのネットワークと専門知識を活かし、皆様の「空き家」にまつわる不安を解消し、次世代へつなぐお手伝いをいたします。










