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特定空家の指導が届いたら、税はすぐ上がる?——上がるのは勧告から【茅野市・原村・富士見町】配信日:
相続した空き家に市から指導が届いたら、次は何が起きる?——税に響くのは勧告から【茅野市・原村・富士見町】
特定空家は、ある日突然決められるものではありません。市の現地確認、指導、勧告、命令、代執行という段階を、一段ずつ上っていきます。
全国の措置の件数を見ると、特定空家への措置は「指導」が大半を占め、勧告は件数でおよそ10分の1です。市から文書が届いた時点は、慌てる場面ではなく、まだ選択肢がいちばん多く残っている段階だと言えます。
この記事で分かることは3つです。
- 特定空家への措置は、どの段階で何が起きるのか
- 固定資産税が上がるのは「いつ」「どのくらい」か(「6倍」という数字の中身)
- 八ヶ岳西麓の空き家で、指導につながりやすい状態と、先に打てる手
「特定空家」とは、どんな空き家のことか?
倒壊などの危険がある、衛生上有害である、景観を著しく損なう、周辺の生活環境に悪影響がある——このいずれかの状態にあると市町村が判断した空き家です。
前提として、法律でいう「空家等」は、住む・使うことが常態としてなくなった建物とその敷地を指します。国の指針では、おおむね1年を通して使った形跡がないことが一つの目安とされています。
判断を分けるのは、築年数ではなく状態です。古い家でも、屋根と外壁が保たれ草木に手が入っていれば対象にはなりません。反対に、屋根材が飛びかけている、立木が道や隣地に倒れかかっている、といった状態であれば判断の対象になります。判断の基準や、所有者への通知の仕方は市町村ごとに定めています。
また2023年12月の法改正で、特定空家になる手前の段階を「管理不全空家」として、市町村が指導・勧告できるようになりました。勧告を受けると税の軽減が外れる点は特定空家と同じです(詳しくは〔⑤-C1-3へのリンク〕)。
市から文書が届いたあと、どう進んでいくのか?
「指導」は改善のお願い、「勧告」から税に響き、「命令」で罰則がつき、最後が市による解体などの「代執行」です。段階ごとに、改善のための猶予が置かれています。
- 把握と調査——近隣からの相談や市の調査をきっかけに、市が外観を確認します。所有者は固定資産税の情報などから探され、相続登記が済んでいなければ相続人に連絡が届くことがあります。
- 助言・指導——修繕や草木の手入れなど、具体的な改善を求める段階です。この時点では税も罰則も変わりません。
- 勧告——指導しても改善されないときに出ます。勧告を受けたまま翌年1月1日を迎えると、翌年度から敷地の住宅用地特例(固定資産税の軽減)が外れます。
- 命令——特定空家で、正当な理由なく勧告に従わない場合に出ます。違反すると50万円以下の過料の対象となり、命令が出たことは標識などで公示されます。
- 代執行——市が所有者に代わって解体などを行い、その費用を所有者に請求します。所有者が分からないときの略式代執行、危険が差し迫ったときの緊急代執行もあります。
全国の件数(2015年度から2024年度までの累計)を並べると、段階ごとの重さが見えてきます。
| 特定空家への措置 | 件数(累計) |
|---|---|
| 助言・指導 | 42,768件 |
| 勧告 | 4,153件 |
| 命令 | 551件 |
| 行政代執行 | 286件 |
| 略式代執行(所有者不明) | 592件 |
| 緊急代執行 | 12件 |
これは措置の件数で、1軒に指導が何度か出ることもあるため、「空き家の10軒に1軒が勧告される」という意味ではありません。新しい管理不全空家でも、2年間で指導3,211件に対し勧告は378件と、同じ形をしています。少なくとも、文書が届いた=すぐに税が上がる、すぐに壊される、ではないことは数字から読み取れます。
固定資産税が「6倍」になるのは本当か?
6倍になるのは税額そのものではなく、軽減が外れたときの計算の土台(課税標準)の最大値です。実際の税額には上限の仕組みがあり、敷地の条件によって2倍から4倍程度が目安です。
住宅が建っている土地は、200㎡以下の部分が6分の1、200㎡を超える部分が3分の1に軽減されています。軽減が外れても、住宅以外の土地は課税標準が評価額の7割までに抑えられるため、200㎡以下の部分で最大4.2倍程度、200㎡を超える部分では2倍程度にとどまります。
これは八ヶ岳西麓の空き家に関わる点です。集落の家は敷地が広く、200㎡を超える部分の割合が大きいため、敷地全体で見た増え方は「6倍」よりずっと小さくなります。正確な額は、市町村の税務の窓口で試算してもらえます。
ただし、見落としやすいことが一つあります。解体して更地にしても、住宅用地特例は同じように外れます。「税が上がる前に壊してしまおう」は、税の面では解決になりません。建物を壊すかどうかは税の損得ではなく、その家と土地をこの先どう使うか、誰に渡すかで決めるほうが、戻れない判断を避けられます(→〔⑤-C3 解体一択ではない選択肢へのリンク〕)。
八ヶ岳西麓の空き家は、どんな状態で指導につながりやすいのか?
標高の高い寒冷地では、屋根と雪、凍結による傷み、草木と立木の越境——この三つが、建物の古さより先に問題になります。
国の指針で判断材料に挙がっているのは、屋根や外壁の落下のおそれ、立木の倒壊や越境、ごみや動物の棲みつきといった、周囲に及ぶ影響です。八ヶ岳西麓の冬と夏に当てはめると、次のようになります。
- 屋根と雪——人が住まない家は暖房も雪下ろしもなく、雪が長く載ったままになります。軒先や雨樋が傷み、落雪が道や隣地に及ぶと、真っ先に声が上がる場所です(→〔⑤-C1-8へのリンク〕)。
- 凍結——水抜きをしないまま冬を越すと、配管の破裂から漏水、床下の腐朽へと傷みが進みます。外から見えにくいぶん、気づいたときには進んでいます。
- 草木と立木——夏の草はひと夏放っておくと敷地の外まで伸びます。立木が電線や道にかかると、日々そこを通る人の問題になります。
集落の中で、こうした変化にいち早く気づくのは、市役所より先に毎日その前を通る隣の家や、区の役員の方です。草刈りや道の管理を区として分け合ってきた場所だからこそ、手の入らない一軒は目立ちます。
逆に言えば、**区や隣家とのつながりが切れていなければ、市の文書より先に、近所の声として知らせが届きます。**遠方に住んでいても、区の役員の方や隣の家に連絡先を伝えておくことは、それだけで一つの手当てになります。
文書が届いたら、まず何をすればいいのか?
放置せずに市の担当窓口へ連絡し、どこが問題とされているかを確かめることです。そのうえで、直す・使う・貸す・売る・壊すのどれにするかを決めます。
- 担当窓口に連絡する——問題とされている箇所を確認し、改善の予定を伝えます。
- 周りに及ぶ影響を先に止める——草刈り、倒れかかった立木の伐採、屋根や外壁の飛散防止、冬前の水抜き。家全体を直す前に、外に出ている問題を片づけます。遠方で手が回らない場合、茅野市では空き家管理事業者の紹介、シルバー人材センターの管理サポート、郵便局の空き家みまもりなどが案内されています。
- 窓口になる人を決める——相続人が複数いれば、誰が市とやりとりするかを先に決めます。名義が親のままなら、相続登記も並行して進めます(2024年4月から義務化)。
- 壊す前に、建物を残したまま一度査定する——建物ごと動かせる道があるかを先に確かめます。鑑定士として見るのは主に二つ、傷みが屋根や配管のように直せる所にとどまっているか、土台や柱に及んでいるか。そして、建物を残したとき、その土地に住む人・使う人が見込めるかです。壊してからでは戻せません。
当社は、残置物が残ったまま、相続登記が済んでいない、農地が付いている、といった空き家でも、自社で買い取って再生できる場合があります。指導を受けている段階の家でも、現地で状態を見たうえで、直して使える家として動かせる道があるかを一緒に確認します。修繕や解体の段取り、農地が付いている場合の手続きまで、行政とのやりとりを含めて当社で進めます。
まずは現状のままご相談ください。
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まとめ——知らせが届いた段階が、いちばん選べる
いちばん避けたいのは、文書を開かないまま次の段階へ進むことと、税を理由に先に壊してしまうことです。税に響くのは勧告から、罰則がつくのは命令からで、指導の段階ではまだどちらも変わりません。
周りに及ぶ影響を止め、窓口を決め、建物を残したまま一度見立てを持つ——この順番を守れば、届いた知らせは、家の行き先を決めるきっかけに変わります。
よくある質問
Q. 別荘として年に数回使っている家も、特定空家になりますか? 使用の実績がある建物は、原則として法律上の「空家等」には当たりません。国の指針では、おおむね1年を通して使っていないことが一つの目安です。ただし、使っていても屋根や立木の状態が周囲に危険を及ぼしていれば、別の法律に基づいて指導を受けることがあります。
Q. 勧告を受けたあと改善すれば、税の軽減は戻りますか? 改善して勧告が撤回されれば、次の1月1日時点の状態で判断され、翌年度から軽減が戻る可能性があります。扱いは市町村に確認してください。
Q. 相続放棄をすれば、指導の対象から外れますか? 必ず外れるわけではありません。相続放棄の時点でその家を現に占有していた人は、次に管理する人へ引き渡すまで保存の義務が残ります(2023年4月の民法改正)。詳しくは〔⑤-C8 相続放棄と空き家へのリンク〕。
Q. 市から指導を受けている家でも、売ることはできますか? 売れます。指導は所有者に改善を求めるもので、売買を止めるものではありません。ただし買主には状態と経緯を伝える必要があるため、建物を残すか、どこを直すかを査定の段階で整理しておくと進めやすくなります。
出典
- 特定空家等の定義:空家等対策の推進に関する特別措置法 第2条第2項
- 管理不全空家等への指導・勧告:同法 第13条(2023年12月13日施行)
- 特定空家等への助言・指導、勧告、命令、公示、代執行、略式代執行、緊急代執行:同法 第22条
- 命令違反の過料(50万円以下):同法 第30条
- 措置の件数(特定空家:助言・指導42,768件、勧告4,153件、命令551件、行政代執行286件、略式代執行592件、緊急代執行12件/管理不全空家:指導3,211件、勧告378件。いずれも令和6年度までの累計):国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)」
- 「空家等」の目安(おおむね年間を通して使用実績がない):空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針
- 勧告を受けた敷地の住宅用地特例の除外、特例率(200㎡以下1/6・200㎡超1/3):地方税法 第349条の3の2
- 住宅以外の土地の課税標準の上限(評価額の7割):地方税法附則(商業地等に係る負担調整措置)
- 相続放棄後の保存義務:民法 第940条(2023年4月1日施行)
- 茅野市の空き家管理の案内:茅野市「ウチの空き家どうしよう?(空き家対策特設サイト)」
- ※2026年9月3日施行の地方分権一括法による空家法の一部改正(空家等管理活用支援法人の対象拡大)は、本稿の措置の流れには影響しない
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八ヶ岳ライフ株式会社 代表 /
不動産鑑定士
長野県茅野市出身。2012年に地元密着の不動産会社「八ヶ岳ライフ」を設立。不動産の適正価値を見極める国家資格「不動産鑑定士」を保有し、年間300件以上の相談実績を持つ。特に八ヶ岳エリア(茅野市・原村)において、他社では取り扱いが難しい空き家や放置物件の再生・買取に力を注いでいるのは、「不動産を通じて故郷に貢献したい」という想いがあるからです。Youtubeでも、相続した空き家・土地・畑などの処分や活用に関する役立つ情報を発信しています。地元出身者ならではのネットワークと専門知識を活かし、皆様の「空き家」にまつわる不安を解消し、次世代へつなぐお手伝いをいたします。










