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空き家の落雪や倒木で隣家に損害が出たら、誰が払うのか——所有者責任の仕組みと、冬までにできること【八ヶ岳西麓】配信日:
空き家の落雪や倒木で隣家に損害が出たら、誰が払うのか——所有者責任の仕組みと、冬までにできること【八ヶ岳西麓】
空き家の相談で多いのは税金と解体費の話ですが、実際に大きな金額が動くのは別のところからです。屋根から落ちた雪が、隣の車を潰した。境界際の木が倒れて、隣の家の屋根を破った。
八ヶ岳西麓で査定に空き家を見に行くとき、私は建物の中より先に、屋根の向きと境界際の木を見ます。冬に一度も来ていない家は、入る前から外で分かります。雨樋が雪の重みで垂れていて、その真下の地面だけが固く踏み固められている——落ちた雪が積み重なった跡です。その落雪が隣地の側に出ていたら、次の冬も同じ場所に落ちます。
空き家が原因で隣に損害を出したら、誰が責任を負うのか?
建物・塀・擁壁・立木といった土地の工作物が原因で損害が出た場合、所有者は原則として賠償責任を負います(民法717条)。
住んでいる人がいれば一次的にその人が問われますが、占有者には免責の規定があり、**所有者にはありません。**空き家には占有者がいないので、最初から所有者に直行します。
「県外に住んでいて、何年も見ていなかった」——これは責任を軽くする事情になりません。むしろ、管理していなかった事実として残ります。
八ヶ岳西麓で実際に多いのは、どんな事故か?
雪と木です。この二つでほぼ説明がつきます。
- 落雪——屋根の雪は、晴れた日の午後にまとめて滑ります。住んでいれば雪止めや物の置き方で折り合いをつけますが、空き家ではその調整が誰の頭にもありません
- 雪の重みによる倒壊——真冬より三月の湿った雪が重い。傷んだカーポート・物置・下屋が潰れるのはこの時期で、潰れた向きが隣地側ならそのまま損害になります
- 倒木・枝折れ——相続した当時は細かった境界際の木が、20年で太さも高さも変わっています。腐りが入った木は雪と風でまとまって傾き、倒木は隣地側へ向かうことが多い
「自然現象だから仕方ない」で済むとは限りません。傷んだ屋根や明らかに傾いた木を放置していた事情があると、管理の問題として扱われます。その土地で毎年当たり前に降る量の雪は、想定外になりません。
一度も行っていない家は、どこから壊れるのか?
水回りと屋根です。しかも、壊れたことが誰にも気づかれないまま進みます。
水抜きをしないと配管が凍って割れますが、冬のあいだは分かりません。問題は春で、どこかで通水されると割れた場所から水が出続けます。誰も住んでいない家のメーターは、誰も見ていません。屋根も、雪と凍結の繰り返しで屋根材がずれ、外から分かる頃には値段のつき方が変わっています。
空き家の火災保険は、いつから条件が変わるのか?
人が住まなくなった時点からです。
居住実態がなくなると「住宅物件」から「一般物件」として扱われる場合があり、保険料の条件が変わったり、継続が難しくなったりします。空き家になったことを知らせる義務が定められている契約も多い。**隣に損害を出す確率がいちばん高い状態のときに、受け皿だけが静かに外れていることがあります。**証券を出して確認するのは、三十分の仕事です。
近所からの苦情は、どういう順番で来るのか?
行政より先に、区や組の役員さんから来ます。そして多くの場合、県外の相続人には届きません。
草が伸びれば隣が困り、組長さんが「あの家、誰が見てるの」と言い始めます。ここで連絡が付けば、たいてい大ごとになりません。現地で何度も見てきたのは、その連絡が届かないケースです。登記の住所が三十年前のまま、区の名簿もそこで止まっている。誰にも悪意がないのに、誰にも連絡がつかない。
相続登記も住所変更登記も、いまは期限つきの義務になりました。面倒が増えたと読むより、連絡が届く状態を作る手続きだと考えたほうが実際に近いと思っています。
責任を減らすために、いま何ができるのか?
壊す前に、この五つです。
- 冬が来る前に一度見る——屋根の落ちる向き、境界際の木、雨樋、下屋。この四つで足ります
- 水抜きを確実にする——鍵と不凍栓の位置を、現地で頼める人と共有しておく
- 火災保険の証券を確認する
- 境界際の木を、越境する前に切る——自分の敷地の木は自由に切れます。越境してきた枝も、催告しても切らないときは自分で切れるようになりました(2023年4月施行の民法改正)
- 登記上の住所を、いまの住所に直す——一番安く、一番効きます
「解体して更地にすれば安心」なのか?
建物の責任は消えますが、最後に選ぶ手です。
住宅用地の軽減が外れて税負担は上がり、接道や用途によっては、壊したあとに同じ規模の建物を建て直せない土地もあります。壊してからでは戻せません。
集落の中にあって畑や山林が付いている家は、そのまま住む人の手に渡ることがあります。ここ数年、20代から40代の方が「畑がついていること」「区に入ること」を最初の希望条件に挙げてくるようになりました。単体では動かない畑や山林が、家とセットにすると動きます。
当社は不動産鑑定士として、茅野市・原村・富士見町の3町村に限って、そのまま動かせるかどうかを、農地転用・境界確定・水利や排水の調整まで含めて査定の段階から読みます。壊す前に一度だけ、次の人に渡せないかを確かめてほしい——それが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
よくある質問
Q. 空き家の屋根から落ちた雪で、隣の車が壊れました。払うのは私ですか? 建物という工作物が原因である以上、所有者が賠償責任を負う可能性が高いです(民法717条)。屋根の傷みや雪止めの有無など、管理の状態も見られます。まずは加入している保険で対応できるかを確認してください。
Q. 何年も行っていない家です。まず何をすればいいですか? 冬が来る前に一度現地を見ることと、火災保険の契約状態を確認することです。この二つは費用がほとんどかかりません。遠方で行けない場合は、現地で見に行ける人を確保する段取りから始めます。
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八ヶ岳ライフ株式会社 代表 /
不動産鑑定士
長野県茅野市出身。2012年に地元密着の不動産会社「八ヶ岳ライフ」を設立。不動産の適正価値を見極める国家資格「不動産鑑定士」を保有し、年間300件以上の相談実績を持つ。特に八ヶ岳エリア(茅野市・原村)において、他社では取り扱いが難しい空き家や放置物件の再生・買取に力を注いでいるのは、「不動産を通じて故郷に貢献したい」という想いがあるからです。Youtubeでも、相続した空き家・土地・畑などの処分や活用に関する役立つ情報を発信しています。地元出身者ならではのネットワークと専門知識を活かし、皆様の「空き家」にまつわる不安を解消し、次世代へつなぐお手伝いをいたします。










